プロフィール

家庭料理の第一人者だった土井勝の次男として大阪に生まれ、スイス・フランスでフランス料理を、大阪の日本料理店「味吉兆」で和食を学んだ料理研究家。2016年の著書『一汁一菜でよいという提案』で、毎日の食事はご飯と具だくさんの味噌汁で充分だと説き、家庭料理の負担に苦しむ人々の支持を集めた。

土井善晴は1957年2月8日、大阪府に生まれた。父は「おふくろの味」という言葉を世に広め、1953年に関西割烹学院(のちの土井勝料理学校)を創設した料理研究家・土井勝(1921-1995)、母も料理研究家の土井信子で、その次男にあたる。台所が仕事場である家に育ちながら、善晴が最初に選んだのは家庭料理ではなかった。芦屋大学教育学部を卒業したのち、スイスとフランスに渡ってフランス料理を修業し、帰国後は大阪の日本料理店「味吉兆」で和食の腕を磨いている。西洋料理と日本料理、その両方の「プロの厨房」を通ってきたことが、のちの仕事の土台になった。

父の主宰する土井勝料理学校で講師を務めたあと、1992年に「おいしいもの研究所」を設立して独立した。NHK「きょうの料理」をはじめとするテレビ・雑誌の仕事を長く続けながら、彼が向き合い続けたのは、プロの技術をどう家庭に降ろすかという問題ではなく、むしろその逆だった。レシピや献立の情報が増えるほど、毎日台所に立つ人が「これだけやらなければ」と追い詰められていく。日々の食事づくりを担う人の心の負担そのものが、彼の主題になっていった。

その到達点が、2016年10月にグラフィック社から刊行された『一汁一菜でよいという提案』である。日常の食事はご飯と具だくさんの味噌汁、あれば漬物で充分だと説いたこの本は、料理の手抜き術としてではなく、暮らしの基準を自分で決め直すための一冊として読まれ、2021年に新潮文庫となったのち累計40万部を超えた。第10回大阪ほんま本大賞 特別賞を受け、英語版 “Rice, Miso Soup, Pickles”(グウェン・クレイトン訳)の刊行も決まっている。現在は十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、料理を技術ではなく生活の思想として語り続けている。

土井善晴の名言一覧