プロフィール
大阪府出身の化学者。リチウムイオン二次電池の基本構造を確立した開発者の一人で、2019年にノーベル化学賞を受賞した。スマートフォンやノートパソコン、電気自動車を支えるこの電池は、現代のモバイル社会と脱炭素の基盤となっている。
吉野彰は1948年1月30日、大阪府吹田市に生まれた。京都大学工学部石油化学科に学び、大学院修士課程を修了して1972年に旭化成へ入社する。研究者としての道のりは平坦ではなく、いくつものテーマが実らずに終わったが、彼はそのたびに新しい問いへと向かい直した。
1981年、吉野は充電して繰り返し使える新型二次電池の研究に本格的に取り組みはじめる。ジョン・グッドイナフが見出した正極材料と、炭素材料を負極に用いる着想を組み合わせ、1985年にリチウムイオン電池の基本構造を完成させた。軽くて小さく、繰り返し充電できるこの電池は、当初はすぐには売れず用途も定まらなかったが、やがて携帯電話やノートパソコンの普及とともに世界を変える基盤技術となっていく。
2019年、吉野はグッドイナフ、スタンリー・ウィッティンガムとともにノーベル化学賞を受賞し、同年に文化勲章も受けた。旭化成の名誉フェローを務めるとともに名城大学で教授として教壇にも立ち、若い世代に科学の面白さと挑戦することの意味を語り続けている。リチウムイオン電池は今や電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電を担い、脱炭素社会を支える中核として、彼の粘り強い研究の成果が世界中で生き続けている。