この名言の意味
この言葉のポイントは、「ポジティブ」と「ネガティブ」を単純に対立させず、時間軸で役割を分けているところにある。宮本は準備の段階では徹底して「できないこと・危ないこと」を数え上げる。それは臆病さではなく、面白いものを確実に届けるための、設計上の慎重さだ。
ところが、いざ「やる」と決めた瞬間からは、同じ人物が一気に前向きへと切り替わる。ここに宮本のものづくりの核心がある——分析と決断は別の作業であり、決めたあとまで不安を引きずる必要はない。「行こう!」という掛け声は、思考のモードを切り替えるスイッチなのだ。だからこの言葉は、慎重な人ほど勇気づける。
現代への示唆
何かを始めるとき、私たちはつい「うまくいく確証」を探し続けて足を止めてしまう。宮本の言葉が教えるのは、慎重に考える時間と、動き出す瞬間の心の持ち方は、分けていいということだ。今日「やる」と決めた小さな用事が一つあるなら、それに取りかかる瞬間だけは不安の計算をやめて、心の中で「行こう!」と号令をかけてみよう。決断と前向きさは、意識して切り替えられる。
背景と出典
2010年、『スーパーマリオブラザーズ』発売25周年を記念して任天堂公式サイトに公開された「社長の代わりに糸井重里さんが訊く スーパーマリオ25周年」でのやり取り。宮本は開発時にまず「できないこと」を挙げるため、周囲から「けっこうネガティブやな」と評されることがある。しかし本人はそれを、危険や無理を見極めるための分析であって悲観ではない、と説明する。その上で「じゃあ、どうすればいいかっていうと、『行こう!』って決めたときにいかにポジティブになれるか」だと語った。